日曜日の早朝も土曜日と同じように冷え込み、レーススタート前の気温は一桁となっていた。
ただ、悪天候の心配は無く、2025年大会は多くの選手がスタートラインに並んだ。
先ずはダブル64Kが7時にスタートする。64Kに出場出来るのは過去の新城トレイルで5時間を切った
実績のある選手のみ。そんな実績を持った選手でも64Kのフィニッシャーになるのは困難を極める。
今年も60名ほどの選手がエントリー。スタート前に全選手の名前がコールされる。果たしてこの中から何名の選手が制限時間内にフィニッシュゲートに辿り着くが出来るのか…。
多くの選手が期待と不安を抱え、家族や仲間、32Kに出場する選手に見送られ、定刻7時にレースがスタートした。
1時間後に新城トレイルのメインレースの32Kがスタートとなる筈だったが、駐車場の混雑により、10分スタート時刻を繰り下げ、8時10分に約700名の選手がすぎの木センター前のゲートからコースに走り出して行った。
コースは林道、シングルトラック、岩場のトレイルが混在したコースとなる。渡渉する箇所もあり、わずか32kmのコースでサーフェイスも目まぐるしく変化する、まさにトレイルランニングのアミューズメントパークだ。
レースがスタートし、日が高くなるにつれ、気温も上がり、多くの選手が暑さに苦戦した。特に日陰の少ない東尾根や南尾根、日陰とは言え風が抜けにくい森の中で消耗した選手が多かったと思う。1周目の周回を終え、最初にスタート地点に帰って来た、ゼッケンNO.55の岩井選手も日なたの暑さを口にしていた。約15分後に岡田選手、岡田選手から5分後に牧野選手が続き、その後は続々と64Kの選手が周回を終え、戻って来た。
岩井選手同様、暑さを口にする選手が多く、自身の体調や天候等のコンディションをから、1周回で止める選手も多く、5時間前後で周回を終えた選手の多くが再出発を悩んでいた。
その中で、今年は2名の女性ランナーが男性ランナーも音を上げるレースに挑んでいた。
秋山選手と上宮選手だ。秋山選手は2年ぶり、上宮選手は3年ぶりの出場だ。序盤はお互い意識しているのか、励ましあっているのか、近くでレースを展開していた。
そして、その5時間が経過して間もなく、無線から32Kトップの情報が入って来た。ゼッケンNO.1860、河崎選手だ。河崎選手は4時間10分18秒でフィニッシュ。その約3分後に2024 OSJ KOUMI100優勝の酒井選手、2021~2023新城11K 3連覇の工藤選手と続いた。
河崎選手は前日の11Kに続き、2日続けてのチャンピオンとなった。長い新城トレイルの歴史の中でも、 初めての快挙だった。一方、女子では序盤リードをしていた佐俣選手を第2関門で追い抜いた吉住選手が昨年に
続き、大会を連覇。左手を骨折しており、左手を使えない不利を跳ね返す、ディフェンディングチャンピオンの走りだった。2位は後半我慢の走りとなった佐俣選手。佐俣選手はスカイランニングで日本代表になるなど、期待の若手選手だ。3位には前日の11Kも3位だった2024 OSJトレイルランニングシリーズクィーンの冨澤選手が入賞した。
フィニッシュ後の選手には道の駅「もっくる新城」の鶏とろ汁が振舞われた。
この日は気温が高く、汗を多くかいた選手には良い塩分補給になったのではないだろうか。具沢山の鶏とろ汁を味わっている選手も多く見受けられた。
そして日が暮れ始めた17時過ぎ。64Kのトップ選手が帰って来た。1周目、3位で戻って来た牧野選手だった。
リスタートする時は一時4位に後退したが、暑さの為、上位の選手がペースを落とす中、着々と順位を上げ、64Kで最初にフィニッシュテープを切った。2位には寺井選手。寺井選手も中盤から後半にかけ、順位を上げ、2位フィニッシュとなった。3位入賞が岡田選手。岡田選手は中盤苦しんだが、後半再度ペースを上げ、表彰台に返り咲いた。そして、この日一番の盛り上がりを見せたのが、3年ぶりの女性ランナーの完走だった。
秋山選手がこの厳しいレースを見事に完走した。3年前の完走者も秋山選手で、また来年も完走を目指すと語ってくれた。
久しぶりの快晴の中で行われた新城トレイル。快晴は有難いのだが、気温が土日両日とも高く、32K、64Kとも完走率は昨年を下回った。特に64Kの選手にとっては日が一番高い時間帯に直射日光を浴びる東尾根を通過しなければならかった為、ペースを落とした選手が多かったのではないだろか。
新城のコースは登りは急登。下りはテクニカル。選手はその分、レースに没入することが出来、非日常体験を満喫出来る。多くの選手から「タフなコースだけど、楽しかった!」、と言う声を聞くことが出来た。
また、64K優勝の牧野選手からは「相互通行の区間では32Kの選手からもエールをいただき、力になった」、と言うコメントもあった。相互通行で少し走りにくい部分もあるかと思うが、エール交換と言う楽しみもある新城トレイル。来年も多くの選手に挑戦してもらいたい。
低山とは思えない、様々な表情を楽しむことが出来る新城トレイル。「来年も」の人も「来年こそは」の人にも2026年のシーズンインの大会に選んでいただけるようにしっかり準備をして選手の皆様をお迎えしたいと思う。
また、大会を盛り上げ、長時間ご尽力いただいた大会サポーターの皆様に、この場をお借りして感謝の気持ちをお伝えしたいと思う。
文 J.I
総合男子 | 総合女子 | ||||
総合順位 | 氏名 | 記録 | 総合順位 | 氏名 | 記録 |
1 | 河崎 鷹丸 | 4:10:18 | 1 | 吉住 有里 | 4:42:42 |
2 | 酒井 亮児 | 4:13:52 | 2 | 佐俣 明香莉 | 4:58:06 |
3 | 工藤 祐輔 | 4:14:33 | 3 | 冨澤 いずみ | 5:03:19 |
4 | 向井 孝次 | 4:15:37 | 4 | 大掛 香織 | 5:05:05 |
5 | 長谷川 直紀 | 4:17:26 | 5 | 山内 菜摘 | 5:17:19 |
■出走数:687名 / 完走者:604名 / 完走率:87.9% |
総合男子 | 総合女子 | ||||
総合順位 | 氏名 | 記録 | 総合順位 | 氏名 | 記録 |
1 | 牧野 高大 | 10:07:01 | 1 | 秋山 穂乃果 | 10:27:31 |
2 | 寺井 智哉 | 10:13:05 | |||
3 | 岡田 裕也 | 10:16:47 | |||
4 | 佐藤 壮介 | 10:19:41 | |||
5 | 相羽 隆吏 | 10:26:05 | |||
■出走数:49名 / 完走者:8名 / 完走率:16.3% |
Photographer Akihiko Harimoto