「距離は短くても侮れない—11Kの真の姿とは」
今年もOSJトレイルランニングシリーズの開幕戦は、愛知県新城市「愛知県民の森」を舞台にスタートした。
その幕開けを飾ったのは、短距離ながらタフなコースで知られる「OSJ新城トレイル11K」。
2007年の初開催から18年。今や新城トレイルは、愛知県内、そして東海エリアを代表する大会へと成長し、毎年多くのランナーを惹きつけてやまない。
子どもたちの笑顔が彩ったレースの幕開け
11Kのレースに先立って行われたのはキッズレース。小学4~6年生を対象とした3K、そして小学1~3年生の1.5Kが続けてスタート。
スタートラインに立つキッズたちは、まるでプロランナーのような集中した表情。コースに飛び出すと、大人では追いつけないようなスピードで駆け抜けていく。その姿を見守る家族や観客の間には、自然と笑顔があふれ、あたたかな空気に包まれた。
木漏れ日のスタート、春の陽気とともに
そして迎えた11Kのスタート。会場は、木漏れ日が差し込む森の中――愛知県民の森・Aキャンプ場。昨年の肌寒さとは対照的に、今年はまるで初夏を思わせるような陽気の中での開催となった。
森の中からのスタートという演出に、選手たちのテンションも自然と高まる。トレイルランニングの“非日常”が、ここからはじまる。
スタート直後は、緩やかな林道を約3km。やがて「シュートン沢」の入口に差しかかると、いよいよ本格的なトレイルへと突入。ここから急登とともに渋滞も始まり、試練の時間が始まる。
登って、登って、また登る。11K最大の難所
シュートン沢を駆け上がりながら北尾根を目指す。小さなアップダウンをいくつも越え、息を切らしながら前へ進むと、ついに11K最大の難所が現れる。
距離にしてわずか900m。だがその区間で約270mを登らねばならない。傾斜は急で足は止まり、心も折れかける。まさに“トレイルの洗礼”ともいえる場所だ。
それでも、この坂を登り切った者に待っているのは、まさにオアシス。選手たちを迎えるウォーターステーションの水は、大会サポーターが背負って担ぎ上げた“心のこもった一杯”。その水の味は、きっと誰よりも選手たちが知っている。
鎖場、岩場、絶景。新城トレイルらしさ全開の後半戦
後半は、新城トレイルらしい下り基調の岩場・鎖場が続く。西尾根から南尾根へと進む道中では、ところどころで絶景が顔を覗かせる。
苦しい登りの記憶を洗い流すように、山から吹き抜ける風と、目の前に広がる自然の眺めが、心と体を再び前へと押し出してくれる。
そして最後の下りを駆け抜け、フィニッシュゲートへと飛び込む瞬間――それぞれの物語が完結する。
11Kは“短い”けれど、“甘くない”
距離だけを見れば「11Kは初心者向け」と思われがちだ。しかしこのコースには、林道・急登・アップダウン・岩場・鎖場と、トレイルランニングのすべてが凝縮されている。
完走率97.5%。数字だけ見れば「簡単そう」に映るかもしれないが、実際にフィニッシュ地点に立ち、選手たちの表情を見てほしい。達成感、疲労感、そして“やり切った”という誇らしさに満ちている。ここには、11km以上の価値が詰まっている。
勝者たちの記録と、姉妹の物語
男子の部を終始トップで駆け抜けたのは、河崎 鷹丸選手。タイムは1時間15分。堂々たる勝利だった。
女子の部では、昨年トップ3を独占した「大掛ファミリー」の牙城を崩すかに注目が集まったが、今年も姉・大掛 莉奈選手がトップフィニッシュ。2位には妹の大掛 柚奈選手が入り、昨年と同じ姉妹ワン・ツーフィニッシュを果たした。
母・大掛 香織選手は32Kのみに出場したため、11Kでの「親子三位内独占」は叶わなかったが、姉妹の成長ぶりに今後のさらなる活躍を期待せずにはいられない。
親子や仲間となら頑張れる!ペア部門はおすすめ
年々ひそかに人気を集めているのが、2023年に新設された「11Kペア部門」。
「ひとりでは不安」「親子や仲間と一緒に走りたい」といった想いに応える形で生まれたこの部門では、トレイルランニングをより気軽に楽しむことができる。
ただし、ペアは常にお互いを目視できる範囲で行動し、2人同時にフィニッシュしなければ完走とはならない。途中で離れたり、1人がリタイアすると失格となるため注意が必要だ。
今年のペア部門では、竹村 伸吾・竹村 風翔親子が2連覇を達成!来年はぜひ3連覇を狙ってほしい。
フィニッシュしたあとは、新城トレイルの名物となった「鶏とろ汁」。
暑かったとはいえ、やはり完走後の一杯は格別な味わい。
このために頑張る選手もきっといるはずだ。
東海地区のトレイルレースと言えば新城トレイル
今年は昨年と違い、初夏のような陽気で、暑さとの戦いとなった。
そんな中、昨年8位だった地元・愛知県出身の10代、鈴木 レオナルド選手が2位にジャンプアップ。
これからも若い世代はもちろん、幅広い世代に愛される大会として、「愛知県」「東海エリアNo.1大会」を目指し、地元の選手、大会サポーター、そして地域一体で新城トレイルを盛り上げていきたい。
18年続くこの大会を、20年、30年と続く大会へ——。
今まで参加してくれたすべての選手、大会を支えてくれたサポーター、そして新城市に、心から感謝を
文/パワースポーツ 今村
【OSJ新城トレイル11Kリザルト】
男子 |
女子 |
総合順位 |
氏名 |
記録 |
総合順位 |
氏名 |
記録 |
1 |
河崎 鷹丸 |
1:15:16 |
1 |
大掛 柚奈 |
1:22:18 |
2 |
鈴木 レオナルド |
1:16:03 |
2 |
大掛 莉奈 |
1:29:15 |
3 |
星野 大輔 |
1:17:56 |
3 |
冨澤 いずみ |
1:37:01 |
4 |
伊藤 哲也 |
1:19:52 |
4 |
村井 愛佳 |
1:53:54 |
5 |
山田 士恩 |
1:22:39 |
5 |
上井 美来 |
1:54:05 |
■出走人数:353名/完走者数:344名(完走率:97.5%) |
【OSJ新城トレイル11ペアリザルト】
11Kペア |
総合順位 |
氏名 |
記録 |
1 |
竹村 伸吾/竹村 諒陽 |
1:46:28 |
2 |
小山 心優/谷脇 よしの |
2:15:45 |
3 |
上田 紀子/上田 貴之 |
2:32:01 |
4 |
兼松 宏憲/吉田 陽子 |
2:41:51 |
5 |
青竹 悠里/高木 理央 |
2:44:23 |
■出走組数:26組/完走組数:24組(完走率:92.3%) |
【OSJ新城トレイルキッズリザルト】
キッズ1.5km |
キッズ3km |
総合順位 |
氏名 |
記録 |
総合順位 |
氏名 |
記録 |
1 |
松永 健之介 |
0:05:18 |
1 |
星野 晴 |
0:10:27 |
2 |
松野 佑 |
0:05:18 |
2 |
地石 百伽 |
0:10:43 |
3 |
星崎 璃空 |
0:05:20 |
3 |
水野 琉輝 |
0:10:50 |
4 |
松永 康之介 |
0:05:27 |
4 |
新海 心菜 |
0:10:57 |
5 |
榊原 瑠晟 |
0:05:39 |
5 |
新海 瑛太 |
0:11:11 |
■出走人数:40名/完走者数:40名(完走率:100%) |
■出走人数:44名/完走者数:44名(完走率:100%) |
トレイルキッズ
11K
Photographer Akihiko Harimoto